2025年5月 みかん農園の作業月報/最も手のかかる新葉と幼果の生育管理

皆さん、こんにちは。和歌山県下津町でみかん農家を営んでおります北文園の北東です。

5月は、みかん栽培において一年の中でも最も忙しい時期の一つです。春の新芽が勢いよく伸び、花から幼果への転換期を迎えるこの時期は、適切な病害虫防除と栄養管理といった作業項目が多く、その年の品質と収量を決定づける重要な時期となります。

5月の作業の重要な目的

  • 新葉の早期緑化
  • 幼果への病害虫防除

今回は、5月1ヶ月間の作業を時系列で詳しくご紹介し、私たちがどのような想いと技術で、皆様に喜んでいただけるみかん作りに取り組んでいるかをお伝えしたいと思います。

5月初旬の作業:害虫防除と新植苗木の保護

ゴマダラヒトリ(毛虫)対策

この毛虫は、みかんのゴマ粒にも満たない新芽を好んで食害し、放置すると新葉も花芽もつかない樹となり、収量は望めず、樹勢も維持できなくなります。

ゴマダラヒトリは、4月中旬から5月上旬にかけて卵から孵化し、幼虫(毛虫)は短期間で大量の新芽を食い荒らすため、早期の発見と防除が極めて重要です。

一部で発見の遅れで大惨事

一部の園でこの毛虫の大量発生を見逃してしまい、対策が遅れてしまいました。他園の剪定作業で見回りができていませんでした。花芽が少なければ新葉がたくさん展葉するはずですが、花芽も葉芽もない樹がたくさん見られる結果を招いてしまいました。

5月7日:ロディー乳剤(一般名:フェンプロパトリン)の散布を実施しました。
ロディ乳剤について→https://www.i-nouryoku.com/prod/search/nouyaku/detail/1/232

毛虫による被害についてのブログ→https://mikan-kitabun.com/caterpillarthreat/

被害樹のその後

被害にあった樹への防除後、5月下旬には新芽と花芽が少しですが出ていました。丸坊主よりはましです。今年花が多すぎる予想もあった園ですので、少ないくらいで良しとしたですが、、、
前向きに考えます!来年は徹底チェックの園です。

5月初旬、本来であれば芽が出て展葉している時期なのに新芽が食害されて芽が出ていない

新植苗木への特別な対策(防除と補食)

今年4月に植え付けた新植苗木に対しては、新芽の発育が極めて重要となります。新芽の食害を防ぐ防除は毎月行います。新芽の保護は、新植苗木の将来の成長を左右する重要な要素です。新芽が健全に育つことで、根系の発達も促進されます。これにより、苗木は早期に園地に定着し、来年以降の安定した生産につながります。

それと加えて化成肥料を二つかみほど、月に1~2回施肥します。胃袋が小さいので、こまめに補食をする感覚と教わって実践しています。格段に大きくなるのが早いです!

5月中旬の作業:病害防除と総合的な栄養管理

5月はまだ朝夕は涼しいですが、昼間の日向は汗だくになります

灰色かび病防除

5月中旬は、みかんの落弁期と重なり、灰色かび病の発生リスクが最も高まる時期です。この病気は、湿度の高い環境で急速に拡大し、幼果の腐敗や品質低下を引き起こす重要な病害です。

5月12~13日、落弁状態と気象条件を慎重に検討した上で、ベルクートによる防除を実施しました。
ベルクートを散布する時は散布する圧力を少し上げて、花弁を吹き飛ばしたり流れ落ちるような感覚で散布します。

灰色かびの防除についてブログ→https://mikan-kitabun.com/tangerineflower2025/
ベルクートについて→https://www.greenjapan.co.jp/bellkute_s.htm

赤:灰色かび病の跡  青:チャノキイロアザミウマの被害痕

そうか病対策

一部の園地では、そうか病の発生が2023年に確認されたため、セルカディスによる防除を2024年から実施して発生を食い止めています。そうか病は、果実表面にかさぶた状の病斑を形成し、外観品質を著しく損なう病害です。

そうか病について→http://www.mikan.gr.jp/byocyu/byougai/souka/index.html
セルカディスDフロアブル→https://www.nippon-soda.co.jp/nougyo/product/4239/

液肥の混合

農薬散布の際には、単に病害虫防除を行うだけでなく、同時に栄養補給も実施しています。毎回、アミノ酸と微量要素入りのNPK中心の液肥に、マグネシウム(Mg)を混合して散布しました。

この混合散布の目的は、多面的な栄養補給にあります。NPK(窒素・リン酸・カリウム)は植物の基本的な栄養素であり、アミノ酸は植物の代謝活動を活性化させます。微量要素は、酵素の活性化や光合成の促進に不可欠で、マグネシウムは葉緑素の中心元素として重要な役割を果たします。

この時期のみかんの木は、新葉の展開と幼果の発育により、多くの栄養素を必要とします。特に、窒素Nは新芽の成長に、リン酸Pは果実の発達に、カリウムKは根の発達に重要な役割を担います。

NPKの樹体への関りについて(ブログ)→https://mikan-kitabun.com/springmanure2024/

新葉の緑化促進

新葉の緑化を促進するため、5月14日には硫酸マグネシウムの土壌施肥を実施しました。マグネシウムは、葉緑素分子の中心に位置する元素で、光合成の効率に直接影響します。

新葉の緑化は、単に見た目の問題ではありません。濃緑色の健全な葉は、光合成能力が高く、糖分の生産効率に優れています。これは、果実の糖度向上に直結する重要な要素です。

緑化が早期に促進されると、●5月末からの生理落果の影響を抑えてくれる、●ミカンハモグリガによる新葉の萎縮の被害を免れることに繋がるため、早く緑化させることが大事と教わり取り組んでいます。

園地整備作業

5月中旬は、草刈作業も重要な作業の一つです。段々畑の土岸部分や作業道の整備で草刈り。

防風樹の剪定も同時に行いました。防風樹は、強風からみかんの木を守る重要な役割を果たしますが、過度に成長すると日照不足や通風不良の原因となります。適度な剪定により、防風効果を維持しながら、園地内の環境を最適化しました。

5月下旬の作業:梅雨に向けた総合防除

今月2回目の合羽を着ての作業です。毎週するのはこの5月だけです(汗)

ヤノネカイガラムシ防除

5月下旬になると、ヤノネカイガラムシの幼虫が活発に活動を始めます。この害虫は、枝や葉に寄生して樹液を吸汁し、樹勢の低下や果実の品質低下を引き起こします。

ヤノネカイガラムシの防除で重要なのは、幼虫期を狙った防除です。成虫になると殻に覆われて薬剤の効果が著しく低下するため、幼虫の発生時期を正確に把握し、適切なタイミングで防除を実施することが不可欠です。

5月20日に次項で紹介するチャノキイロアザミウマと黒点病の防除とあわせてコルトによる防除を実施しました。

ヤノネカイガラムシについて→https://minorasu.basf.co.jp/80422

チャノキイロアザミウマ対策

この害虫は、幼果の表面を食害し、果実の外観品質を著しく損なう害虫です。特に、高温乾燥条件下で発生が多くなる傾向がありこの時期に初回防除を始めます。

チャノキイロアザミウマは、体長1~2mm程度の微小な害虫で、幼果の表面を舐めるように食害します。被害を受けた果実は、表面に銀白色の食害痕が残り、商品価値が大幅に低下します。

コルトは、アザミウマ類に対しても効果を発揮するため、カイガラムシとアザミウマの同時防除が可能です。これにより、作業効率の向上と防除コストの削減を実現しています。

チャノキイロアザミウマについて→http://www.mikan.gr.jp/byocyu/gaichu/azamiuma/index.html

コルト顆粒水和剤について→https://www.greenjapan.co.jp/colt_ks.htm

黒点病予防

黒点病は、果実表面に黒色の小斑点を形成し、外観品質を著しく損なう重要な病害です。この病気は、雨水による病原菌の飛散で感染が拡大するため、梅雨前の予防防除が極めて重要です。

ジマンダイセン(一般名:マンゼブ)による予防防除を実施しました。ジマンダイセンは、多作用点阻害型の殺菌剤で、黒点病をはじめとする多くの病害に対して広範囲な効果を発揮します。

ジマンダイセンについて→https://www.greenjapan.co.jp/jimandaisen.htm

夏肥の施肥:樹体への栄養供給

病害虫防除作業が完了した5月末には、夏肥の施肥を実施しました。夏肥は、夏季の高温期における樹体の栄養維持と、果実の充実を目的とした重要な施肥です。

今回使用したのは、遅効性の肉カスを原料とした有機肥料です。この肥料の特徴は、アミノ酸を豊富に含み、微生物による分解を通じて徐々に養分が供給されることです。

肉カス配合有機肥料

有機肥料の選択理由

肉カスを原料とした有機肥料を選択した理由は、以下の通りです:

1. アミノ酸供給効果 肉カスには、植物の生育に必要な各種アミノ酸が豊富に含まれています。これらのアミノ酸は、植物の代謝活動を活性化し、ストレス耐性の向上に寄与します。特に、高温期のストレス軽減効果が期待できます。

2. 遅効性による持続的供給 有機肥料は、土壌微生物の分解活動により徐々に無機化されるため、長期間にわたって安定した養分供給が可能です。これにより、急激な窒素過多を避けながら、継続的な栄養補給を実現できます。

3. 土壌改良効果 有機物の施用は、土壌の物理性・化学性・生物性を改善し、根系の発達を促進します。これにより、養分吸収効率の向上と樹体の健全育成が期待できます。

施肥方法と注意点

肉カスのためカラスが集まって食べられることがあります。降雨の前を狙って施肥を行います。雨が降った後はすぐにカビが発生して、タンパク質をアミノ酸に分解してくれて臭いを消してくれるのでカラスが集まってきにくくなりますのでこのタイミングを狙います

5月の作業の結果

  • 新葉の早期緑化
  • 幼果への病害虫防除
●中央の葉は旧葉、左の葉が新葉だがかなり緑色が濃い ●右の幼果3つ:一番左は生理落果の直前

生理落果も始まりました

2025年度、自園では表年(豊作:着果過多)になる見込みです。ですが、昨冬からの天候不順(厳寒、降雨不足)などで裏年(不作:着果不足)になるかもしれません。樹体養分が不足して生理落果を助長させないためにも早期緑化が急務でした。なんとか行けそうな気がしています。

一次生理落果:地面一面に幼果が落ちています(普通の光景です)

作業記録管理と品質向上への取り組み

詳細な記録管理

以前は日記に施肥量や防除量を記録していましたが、今ではスマホにてスプレッドシートを用いてすぐに施肥量や防除暦を記録しています。

昨年の施肥量や防除の状況を確認して、結果を観察して次回の作業に活かせるようにしています。

継続的な改善への取り組み

記録データの分析により、以下の改善点を抽出しました:

  • 薬剤散布のタイミング最適化
  • 病害の発生と薬剤の選択
  • 気象条件を考慮した作業計画
  • 適切な施肥量の把握と肥料コストの最適化

これらの改善点は、来年度の作業計画に反映し、さらなる品質向上と作業効率化を目指します。

品質へのこだわりと今後の展望

品質向上への効果

5月の総合的な管理により、以下の品質向上効果が期待されます:

  • 病害虫被害の最小化による外観品質の向上
  • 適切な栄養管理による糖度の安定化
  • 健全な樹体維持による果実の日持ち性向上
  • 総合的な管理による味のバランス改善

お客様との信頼関係

これらの取り組みを通じて、お客様に安心・安全で美味しいみかんをお届けし、長期的な信頼関係を築いていきたいと考えています。

まとめ

5月の1ヶ月間は、みかん栽培において極めて重要な時期であり、この時期の適切な管理が年間の品質を決定づけます。

毎日の細やかな観察と丁寧な作業の積み重ねが、和歌山みかんの伝統的な美味しさを支えています。これからも、お客様に喜んでいただける最高品質のみかんの生産に努めてまいります。

これからもみかん日記を楽しみにしていてください。

※当園では、こだわりの和歌山みかんを産地直送でお届けしています。9月末から出荷を始めますのでお楽しみにしてください。 メルマガに登録頂けますと受注開始のご案内をさせて頂きます。宜しければ登録をお願い致します。

メルマガ登録はこちら→https://mikan-kitabun.shop-pro.jp/customer/newsletter/subscriptions/new

文責 園主 北東宏文

ご注文はこちら

ご注文はショップページから承っております。

お問い合わせ

お問い合わせはフォームをご利用ください。
畑に出ており、電話に応答できない場合がございます。
まずはお問い合わせフォームから
ご一報をお願い致します。

みかん