こんにちは。和歌山県下津町でみかん農園「北文園(きたぶんえん)」を営む北東です。
このブログでは、日々の栽培作業の様子や、みかん作りにかける思いを「みかん日記」として綴っています。
今回は、2025年の夏に入り早くも気がかりとなっている“乾燥”への対策についてご紹介します。
◆早すぎた梅雨明け、みかん栽培への影響
今年(2025年)は例年に比べて非常に早い梅雨明けとなりました。
下津町では6月24日からほとんど雨が降らず、7月に入ってからは晴天続き。みかんの木々にとっては、本来であれば土壌にしっかりと水分が蓄えられるはずの大事な時期に雨が不足し、乾燥の影響が懸念されています。
みかんの栽培において、7月前半の水分は非常に重要です。
この時期は果実の肥大が始まるタイミングであり、水分が足りないと果実が小さくなるだけでなく、落果や日焼けのリスクも高まります。また、木全体が水分不足に陥ると樹勢が弱まり、来年以降の着花や収量にも影響を及ぼしかねません。
昨年(2024年)も同様に梅雨明けが早く、乾燥に悩まされた年でした。その経験を踏まえ、今年はより早い段階での対応が求められています。
◆昨年の乾燥対策:酢酸資材の活用
乾燥によるストレス対策として、近年注目されているのが「酢酸を含む資材」です。
昨年は『現代農業』(農文協)でも酢酸を活用した農業技術が特集されており、水ストレスへの耐性向上や根の活性化といった効用が紹介されていました。
たとえば、酢酸には以下のような効果が期待されています。
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乾燥耐性の向上
酢酸処理を受けた植物は、水分利用効率(WUE)が向上するとされ、乾燥下でも比較的安定して生育する可能性があります。 -
根の活性化と発根促進
酢酸は根の伸長を促す働きがあり、水分や養分の吸収効率を高める役割があるとされています。 -
病害虫への抵抗性強化
植物体内の免疫反応を刺激し、害虫・病気に対する防御反応を高めるという研究報告もあります。
参考文献:
◆Skeepon(スキーポン)という新資材の提案
今年は、取引のある肥料業者さんから「Skeepon(スキーポン)」という資材の提案もいただきました。
これは、植物にとってストレスとなる高温・乾燥・紫外線・塩害などの環境要因から守る効果を狙った、次世代のバイオスティミュラント系資材とのことです。
Skeeponには、以下のような特徴があるそうです。
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アミノ酸や有機酸などをベースとした処方で、葉面散布や灌水に使える。
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植物体に対して「抗ストレス応答」を誘導する。
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蒸散抑制や光合成維持など、乾燥に伴う生理的ダメージを軽減する。
実際に使用するかどうかは現在検討中ですが、新しい資材の情報収集と試験導入は今後も続けていきたいと思っています。
Skeepon(スキーポン)について⇒https://ac-planta.com/products/skeepon/
◆きっかけとなった昨年のカメムシ被害と木酢液の活用
昨年はカメムシの被害も目立った年でした。特にチャバネアオカメムシの発生が多く、果皮への吸汁被害による商品価値の低下が問題となりました。
そこで昨年の夏に導入したのが「木酢液(もくさくえき)」の葉面散布です。
木酢液には独特の香りがあり、害虫の忌避効果があるとされています。また、植物自体の代謝を活性化させる効果も期待できることから、乾燥や病害虫対策の両面で使用しました。
酢酸について調べるきっかけとなった事象でしたが、環境に良い資材として活用が広まっているようです。
現代農業⇒https://gn.nbkbooks.com/?p=42083
◆今年の対策①:成木園地への葉面散布
今年は、昨年の在庫が残っていた木酢液を1000倍に希釈し、成木園地に対して以下のような葉面散布を行いました。
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使用時期:7月第1週(乾燥が懸念され始める)
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混用資材:農薬(病害虫予防)+アミノ酸液肥(活力補助)+木酢液
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散布方法:動力噴霧器にて気温の比較的に低い朝と夕方に
アミノ酸液肥を併用することで、葉からの栄養吸収効率を高め、光合成の促進やストレス軽減を狙いました。木酢液はその香りでカメムシ等の忌避効果も期待できるため、一石二鳥の対策と言えるでしょう。
◆今年の対策②:小木園地への灌水処理
若木(3〜5年生)の園地には、木酢液を500倍に希釈し、灌水処理として使用しました。
ここでポイントになるのが土の状態です。
乾燥により土表面がカチカチに硬くなってしまっていたため、そのまま上から水を撒いても表面を流れてしまい、根に届かない可能性があります。
そこで、灌注用器具を新たに購入して、**地中灌注(ちちゅうかんちゅう)**の形で、木の根元周辺に注ぎ込みました。
これにより、必要な成分をしっかりと根の周囲に届けることができ、乾燥下でも木が健全に育つように工夫しています。
またこの園地では水源が近くなく頻繁に灌水できないので、草との共生で地面が乾燥しすぎないようにしています。(※草刈りの頻度はかなり上がります(泣き))

◆みかん栽培は“自然との対話”
みかん農業は、自然相手の仕事です。
「例年通り」が通用しない昨今、私たち農家は日々の変化に気を配りながら、最適な対策を選んでいく必要があります。
酢酸資材や木酢液といった一見地味な技術にも、乾燥というリスクに対抗する知恵が詰まっています。
今年もおいしいみかんをお届けするために、木々の健康と土の状態を第一に考えながら、ひとつひとつ丁寧に作業を続けています。
◆まとめ:乾燥対策は“今”が重要
今年のように雨が少ない年は、乾燥対策が今年もですが来年の収量と品質を左右するカギになります。
木酢液や酢酸資材、アミノ酸肥料をうまく活用しながら、みかんの木々が健やかに夏を越えられるよう、引き続き気を引き締めて作業にあたります。
こうした裏方の努力が、秋に皆さまの元へ届く「甘くて味の濃いみかん」につながります。どうぞ楽しみにお待ちいただければ嬉しいです。
※当園では、こだわりの和歌山みかんを産地直送でお届けしています。9月末から出荷を始めますのでお楽しみにしてください。
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