こんにちは、和歌山県下津町でみかんを育てている北文園です。
7月になると、畑の中では果実がぐんぐん大きくなり、枝がその重みでだんだんと垂れてきます。収穫までまだ先とはいえ、この時期に欠かせないのが「枝吊り(えだづり)作業」です。
今日は、その作業の意味と工夫、裏側についてご紹介したいと思います。
枝吊り作業とは?果実の重みで垂れ下がる枝を支える仕事
みかんの果実が大きくなると、その重さで枝が下向きにしなってきます。
見た目には「実がたわわについていい感じ」と思われるかもしれませんが、実はそのまま放っておくと様々な弊害が出てくるんです。
特に問題なのが、枝が垂れすぎることで下の枝に被さり、日光が当たらなくなること。
葉に光が当たらないと光合成の働きが落ちてしまい、糖度の乗った美味しいみかんが育ちにくくなります。また、風通しも悪くなるため、病害虫のリスクも上昇。湿気がこもるとカビ系の病気にも弱くなってしまいます。
そこで行うのが「枝吊り」。
竹や周囲の主枝・亜主枝を利用しながら、しなった枝をもとの位置に戻すように紐で吊り上げます。

吊り上げる高さの基準は「花が咲いた頃の位置」
枝を吊る際に意識しているのは、「花が咲いた位置に戻してあげること」。
果実は花が咲いた位置に実るわけですが、肥大とともに重くなって枝がしなってきます。そのため、あの頃の角度に戻してあげることが、葉にしっかり光が当たる理想的な状態だと考えています。
※5月末と6月に中下旬に、着果しすぎたみかんの実は自ずと生理落果します。7月入って残っている実は栄養状態が良い果実と言うことです。ですので、その実が花を咲かせてあげた時が最も効率よく養分供給が行われている証です。

さらに、水平に戻して少し垂れ下がれるくらいに調整しています。これは、熟すにつれて果実の重みで自然に下垂し、葉の陰に隠れるような角度になるため。
そうすることで、収穫前の強い日差しで果実が日焼けするのを防ぎつつ、糖分が葉から果実へじっくり移っていく条件を整えられるのです。
資材はジュート紐。数年で朽ちて樹を傷めない自然素材
枝吊りには「ジュート紐(麻ひも)」を使っています。
ジュート紐は数年で自然に分解される素材なので、万が一枝に括り付けたままになっても、木に食い込んで傷つけることがありません。
私が意識しているのは、ゆとりを持たせた輪にして、かつ解けない結び方にすること。
風が吹いても緩まない、でも樹を締め付けすぎない、そんな加減を見極めながら一本一本手作業で吊っていきます。
※就農研修で教わった結び方ですが、本当に締め付けずに結ぶので気に優しい結び方です。
台風対策にもなる「吊る」という仕事
夏から秋にかけて、台風の季節がやってきます。
枝が大きくしなったままだと、風にあおられて枝ごと揺れ、大事な果実が「風キズ」を負う原因になります。
枝を吊っておくことで、揺れを最小限に抑えられるのも大きなメリット。
特に若い木(小木)は枝が細くてまだ力がないので、裂けたり、最悪の場合折れたりするリスクもあります。
だからこそ、枝吊りは樹体そのものを守るためにも、非常に大事な作業なんです。
竹を使う副作用?「タイワンタケクマバチ」の存在
枝吊りには、竹を支柱代わりに使うことも多いのですが、ここで思わぬ伏兵が現れます。
それが「タイワンタケクマバチ」という外来種の蜂です。
この蜂は竹に直径1cmほどのきれいな丸穴を開けて巣を作る性質があります。見た目は可愛い(?)のですが、うっかり手でその穴に触れてしまうと刺されることがあるので注意が必要。
攻撃的な性格ではないものの、知らずに近づくと危険な場合もあります。
枝吊り作業中は、竹の支柱にこうした穴が開いていないか、目視と感触でしっかりチェックするようにしています。


枝を吊る、その一手間が「味」に変わる
枝吊りは、果実が見た目に立派になる作業ではありません。
でも、みかんの味や品質、木の健康、そして収穫までの安全性を守る大切な仕事です。
みかん作りは、収穫する何ヶ月も前から「おいしくなる準備」を重ねていくことの積み重ねです。
その一つひとつの手間が、冬に「おいしい!」と笑顔で食べていただけることにつながっていると思っています。
最後に|真夏の畑でコツコツと
連日の暑さで、私たちも汗だくになりながらの作業ですが、この一手間が後の味を変えると思うと、やっぱり手は抜けません。
引き続き、北文園のみかんをどうぞよろしくお願いいたします!
2024年の枝吊りの様子⇒https://mikan-kitabun.com/suspensionofbranches_pickingfruit/