こんにちは、和歌山県下津町のみかん農家・北東です。日増しに暖かくなり、みかんの木々も活気づく季節となりました。新芽が芽生え、花芽が多いのか?葉芽が多いのか?このバランスがどうなっているのか緊張する4月なんです。今回は4月に行った重要な作業を皆さんにご紹介します。
【連年結果を目指す剪定作業】
みかん栽培において、「連年結果」(毎年安定した収穫)は私たち農家の永遠のテーマです。特に温州みかんは「表年・裏年」と呼ばれる隔年結果の傾向が強く、これを克服するためには計画的な剪定が欠かせません。
2月下旬から、昨年の結果枝を大事に(春に芽が出て来季の実りが確約)して多すぎる結果母枝(今年花をつけて実る枝)は葉を落として葉芽を出させます(予備枝設定)。さらに内向枝や込み合った枝、弱った枝を選別して取り除くことで、樹内の風通しと採光性を改善。
この作業が実に難しく、一生勉強し続ける作業です。

先生曰く「一本一本どう成長したいのか?樹と話をする」。一本一本の木と対話するように剪定ハサミを入れていきます。各樹の状態に合わせた調整が必要なため、最も時間と経験を要する作業かもしれません。
剪定についての記事こちら→https://mikan-kitabun.com/202503pruning/
【土づくりはみかんづくりの基本:ケイ酸素材の施肥】
みかんの品質は土から。ケイ酸は植物の「骨格」を強化し、病害虫への抵抗力を高める効果があります。
4月上旬、樹冠下の土壌にケイ酸資材を均一に散布しました。この施肥により、
- 葉の緑化促進→光合成能力の増進
- 根の伸長促進→養分吸収力の増進、樹勢向上
- 果実の糖度向上
などの効果が期待できます。私たちの園では有機質肥料との併用により、化学肥料だけに頼らない持続可能な土づくりを心がけています。
「山の土は海を育て、海の恵みは山を潤す」―健全な生態系の循環を大切にした農業を続けていきたいと思います。

【ヤノネカイガラムシ対策:春のマシン油散布】
みかんの大敵の一つ、ヤノネカイガラムシ。この害虫はみかんの果実に着いて果実品質に大きく影響したり、枝そのものを枯らしてしまうこともあります。
3月中旬以降が適期になります。葉裏に潜むカイガラムシを駆逐するために、剪定が一段落してからの4月にマシン油乳剤の散布を実施しました。この時期の散布は越冬世代の幼虫に効果的で、初期防除の要となります。散布にあたっては、以下の点に注意しました:
- 散布ムラをなくすため、風の弱い日に作業
- 幹や主枝の裏側まで丁寧に散布
- 3日以上晴天が続く日
有機JAS認定園でも使用できる環境負荷が少ない農薬の一つです。農薬使用量の削減と品質維持の両立を目指し、日々試行錯誤を続けています。
【春草の管理:適切な除草剤使用】
4月は草の成長も旺盛な時期。春肥の養分競合や地温上昇で花の開花を揃えるなど春草の徹底除草をする農家もいますが、私はあまり積極的ではありません。春草の中にも厄介な草はありますが、ある程度生やしておいて、枯れて地面を覆ってくれると夏草を抑制してくれるメリットもあります。
3月末に肩掛け噴霧器でサッと、4月下旬にしっかり
私の場合は、3月末の春肥施肥の前に接触型除草剤を、畑内の樹間通り道(施肥作業や防除ホースの取り回しの邪魔を排除)、電柵の引いているエリア(漏電の防止)を目的に肩掛け式噴霧器で除草剤散布を行います。
旺盛に生えてくるので4月下旬に、今年は動力噴霧器で全面に吸収移行型でゆっくりと効かせて、長く草を抑えるようにしています。
繁茂させようとしている春草
最近増えてきているノボロギク(下の写真)は、2月下旬から生え始め4月中旬まで花をつけます。この草は背丈があまり高くならず、他の草を抑えてくれているように思います。なので、肩掛けで除草する際は、この草には掛けないようにしながら散布しています。

【園地の若返り:老木から苗木への更新】
みかん園の持続的経営には計画的な樹齢構成が欠かせません。
今年選んだ品種は、晩生品種「植美」、早生品種「宮川早生」、高糖系「丹生系」です。
苗木の植付けにはケイ酸素材を使用して根の活着を促進。山の段々畑でなかなか水を上げれないところなので水分を徐々に放出するポリマー「サンフレッシュ」を使用しました。
苗木への更新の記事はこちら→https://mikan-kitabun.com/trangerineseedling/
【花と新芽の充実:葉面散布で樹勢向上】
4月下旬、花芽の充実と新梢の緑化促進を目的とした葉面散布を実施しました。マグネシウム(Mg)、アミノ酸、NPK(窒素・リン酸・カリウム)をバランスよく配合した液肥を使用し、以下の効果を狙っています:
- マグネシウム:葉緑素形成の促進、光合成能力の向上
- アミノ酸:代謝活性化、ストレス耐性向上
- NPK:基礎栄養素の補給、花芽充実、結実促進
葉面散布は根からの吸収よりも速やかに効果を発揮するため、この時期の栄養補給には最適です。

【5月に向けて】
4月の作業を終え、いよいよ5月に入ります。5月は開花した花弁につくカビなどの病気から幼果を守る防除が必要になります。また虫の活動も活発になるため害虫駆除の防除も必要です。幼果を守りつつ、若葉を早く緑化させて光合成にて養分生成を一人前に発揮させるための葉面散布・施肥と忙しい月となります。
私たち下津町のみかん農家は、先人から受け継いだ技術と最新の農業知見を融合させながら、最高品質のみかんづくりに取り組んでいます。こうした日々の小さな作業の積み重ねが、皆様の食卓に届く甘くて風味豊かな下津みかんを生み出しています。
ぜひ秋の収穫期には、私たちの園で育った温州みかんをご賞味ください。皆様のご理解とご支援が、私たちの農業への情熱をさらに高めてくれます。
次回の農作業日記もどうぞお楽しみに!