2025年3月 みかん農園の作業日誌/終わらない剪定、草の隆盛と始まる防除

皆さま、こんにちは。和歌山県下津町のみかん農家「北文園」です。日ごとに暖かさが増し、みかん畑にも春の訪れを感じる季節となりました。今回は3月の農園作業についてお伝えします。

春の重要作業 – みかんの剪定

3月の最も重要な作業といえば、やはりみかんの剪定です。冬の間に休眠していた木々も、気温の上昇とともに少しずつ活動を始める時期。この時期の剪定は、今年の実りを左右する大切な作業となります。

剪定には主に二つの目的があります。一つは「整枝」。これは樹形を整え、日当たりや風通しを良くするための作業です。みかんの木は放っておくと枝が密集し、内側まで日光が届かなくなってしまいます。そうなると光合成がうまく行われず、美味しいみかんが実らなくなってしまうのです。

もう一つの目的は「新芽と花芽のバランス調整」。ここが本当に難しいところです。昨年、早生みかんは記録的な不作にしてしまいました。よって今年は「とてつもない豊産」となり大量の小玉が見込まれます。極端な豊作⇔不作は品質の不安定を招きますので、剪定と施肥で是正していきます。
毎年「安定して豊作」となるように毎日、樹と向き合っていました。

ブログ剪定奮闘記:https://mikan-kitabun.com/202503pruning/

 

剪定を終えた木々は、すっきりとした姿になり、畑全体が明るくなりました。これからどんな新芽を出し、花を咲かせるのか、楽しみでなりません。

上段が剪定前、下段が剪定後(もっさりしたのが解消されています)

 

春肥の施肥 – みかんの成長を支える栄養補給

剪定と並行して行ったのが「春肥」の施肥です。春肥とは、これから活動期に入るみかんの木に必要な栄養を与えるための肥料のこと。春肥には新芽の成長や花芽の形成に必要な窒素を中心とした化成肥料を使用しています。

肥料の種類とタイミング

みかんの花の開花は5月連休明けです。開花期と新芽の展葉期に向けて養分を消費するので、1か月余りでしっかり効いて欲しいので、即効性の化成肥料を、桜の開花の頃に施肥を行います。
先代は年間2回の施肥でしたが、先生の指導の下、樹の養分需要を考慮して年に3回にしています。
春肥:開花と新芽の展葉・・・即効性の化成肥料
夏肥:新芽の早期緑化と果実への養分・・・緩効性の肉カス有機肥料
秋肥:樹体回復と来季の発芽促進・・・緩効性の有機肥料

この容器で約10kg。肥料袋20㎏を反に約8袋を目安にしています

ただし、肥料をまくタイミングには注意が必要です。というのも、この時期は雑草も一気に成長を始めるから。みかんの木と雑草が栄養を奪い合うことになります。そのため、肥料を撒く前に雑草対策を草の勢力が強いところでは行いました。

この時期の春草とは共存したいので、肩掛け式の散布機を使って除草剤を軽く散布する程度です。

それでも、適切なタイミングで適切な量の肥料を与えることが、甘くて美味しいみかんを育てる秘訣。汗をかきながらも丁寧に作業を進めました。

 

雑草管理 – みかんと雑草の共存バランス

和歌山の温暖な気候は、みかんの生育に適している反面、雑草の成長も早めます。3月に入ると、畑のあちこちから雑草が顔を出し始めます。

雑草管理は農家にとって頭の痛い問題の一つです。完全に除去しようとすると膨大な労力がかかりますし、除草剤の過剰使用は土壌環境への影響も考えなければなりません。かといって放置すれば、肥料や水分を奪われるだけでなく、病害虫の温床にもなりかねません。
それに、斜面に段々畑の多い当園では、作業時に転落する危険性があります。

当園では「適度な雑草管理」を心がけています。
夏草は夏から秋の収穫時期にかけて、作業時の転落事故にもつながるので、除草をしっかり行います。初夏に土壌改良剤を散布して土の表面を被覆して、草が生えてこないようにします。

春草は共存

春草は草丈も高くならず5月過ぎには枯れてくるので、基本的には共存を考えています。
肩掛け式の噴霧器で散布を行います。草の植生や勢いを観ながら散布するのかしないのか、再散布するかを判断しています。

動力噴霧器でしっかり除草する方法もありますが、草に天敵もついてくれるますし(害虫もいますが)、なにより土が元気でいて欲しいので共存しています。

 

かいよう病対策 – 予防が最大の治療

3月の作業でもう一つ重要なのが、「かいよう病」の防除です。かいよう病は細菌性の病気で、特に風当たりの強い場所で発生しやすく、いったん発症すると治療が難しいという厄介な特性があります。

かいよう病

当園でも風の強く当たる北側の圃場では、毎年注意深く観察し予防に努めています。3月中旬に、ICボルドー(銅剤)の防除作業を実施しました。

防除作業は、合羽に長靴、マスクと手袋を着用しての重装備。3月とはいえ日中は20度を超える暑さの日もあり、防護服の中は汗だくに。久しぶりの本格的な作業に体力の衰えを感じました。それでも、大切なみかんの木を守るためには欠かせない作業です。

液肥もしっかり

散布する際には必ず液肥を入れています。今回のボルドー液は混用が制限されているので、硫酸マグネシウム(Mg)を混用しています。Mgは新芽の緑化促進などに役立つ微量成分です。ヒトの体と同じでミネラルが重要なんです。

 

3月を終えて – 新たな季節への期待と不安

こうして3月の主要な作業を終え、農園のみかんの木々は新しい成長のサイクルに入ろうとしています。剪定された枝からは新芽が芽吹き始め、間もなく花の香りが農園中に広がる季節となります。

ただ、農家の頭から離れないのは天候への心配です。昨年の記録的な猛暑は、みかんの生育に大きな影響を与えました。着色不良や日焼け果の増加など、品質面での課題も多く、収穫量も例年より減少しました。「今年も昨年のような猛暑が来るのだろうか」という不安は常に頭の片隅にあります。

また、カメムシも越冬しているようで例年の2倍の発生リスクがあるようです。周期的に大発生をしていたカメムシの生態は大きく転換しているようです。
https://www.agrinews.co.jp/news/index/297960

それでも、毎年変わる気象条件の中で、どうやって最高品質のみかんを育てるかを考え、試行錯誤することが農家の醍醐味でもあります。昨年の経験を活かし、より暑さに強い栽培方法を模索しながら、今年も一年を通して最善を尽くしていきたいと思います。

最後に

いつも当園のみかんをご愛顧いただき、このブログを読んでくださっている皆様に心から感謝申し上げます。これからも定期的に農園の様子をお伝えしていきますので、どうぞお楽しみに。

次回は4月の作業と、みかんの花が咲く美しい農園の風景についてお届けする予定です。皆様のご家庭に届けるみかんが、少しでも美味しくなるよう、これからも精一杯努力してまいります。

和歌山県下津町から、春の便りをお届けしました。

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